てんちむさんと景品表示法

先週、YouTubeでてんちむさんが再炎上してるのを目の当たりにし、正直「怖…!」ってなりました💦 わたし達ビューティー・コスメ業界の広告に携わる者なら常識である「景品表示法」に違反する内容の広告(画像)を、個人のInstagramに投稿したことからの、まさかの再炎上。


念のため、彼女はすでにKIREINOWA社のナイトブラ広告で、”ナイトブラで胸が大きくなった”と誤解させる内容の広告に出ていたのに、実は豊胸手術を受けていたことが露呈し、購入者全員に”全額返金する”ために、ご本人もよく事情が分からないまま法外な”手数料”まで含め億単位の負債を抱えることになった…、という経緯は皆さんご存知の通り。「AカップからFカップになった」と使用前・使用後の写真を並べた広告は、典型的な景品表示法違反となります。

今回は、脱毛サロン「C3(シースリー)」の施術について”9ヶ月0円で初期費用の不安も無いし(後略)”と表記した画像をご自身のInstagramストーリーズに投稿されました。これでは確かに「タダで9ヶ月間脱毛施術を受けることができる」と受け取られても仕方ありません。(本当は9ヶ月後に施術費用が請求されます)

また「撮影があるので脱毛サロンのC3に行ってきました」という文言が目立っているのも個人的に気になります。おそらくここがご本人の「投稿意図」に当たるのだろうと推測しますが、まるで個人的な報告(◯◯でごはん食べて来たよ!みたいな)を装うようなこの文章。広告とするにはすごく意識が低い…と感じてしまいます。


この投稿について、タレコミを受けた有名YouTuberコレコレさんが取り上げ、てんちむさんご本人が配信に電話出演したところ、「9か月間無料って思うんですか? 普通の人って」という発言や、大きなため息をつくなどの態度で見事再炎上となりました。今回、てんちむさんは即自身のチャンネルで謝罪動画をあげましたが、それがまたあまり内容が良くなかったとのことで、服装や態度を改め前代未聞の「謝罪動画あげ直し」となりました。


一応、わたしもそれらの動画をみてご本人の言い分を確認してみたのですが、個人的に①「いまお金がなくても、9ヶ月後に払えばいいというのは良いと思った」②「クライアントの気持ちも分かるし…」という発言が気になりました。


まず、①脱毛処理をしたくても「いまお金がない」人が「9ヶ月後なら払える」前提になっている点、気になります。どういう事情で「いまお金がない」のか分かりませんが、9ヶ月間日々節約して脱毛費用をコツコツ貯めるのでしょうか? 何か流動的な収入があるのでしょうか。どちらにしても、あまり金銭的余裕のない人が利用すべきシステムとは思えません。


また、②「クライアントの気持ちも分かるし…」も、たしかに一般人のわたし達には理解しづらい発言です。「クライアントの気持ち」を汲み取って、クライアントにとって不都合な事実「実は9ヶ月たったら費用を請求する」ということを記載しなかったのでしょうか。


このような「不都合な事実」を隠した広告を「一般消費者に誤認されるおそれがある表示」として「有利誤認」や「優良誤認」と呼び、景品表示法違反となります。これは景品表示法の中でもごく初歩的な内容で、美容やコスメなどの広告に携わる人なら誰でもよく知っています。そういった広告を見れば、よく下のほうに小さな文字で「※当社比」とか「※すべての人に効果を保証するものではありません」などという文言が書いてあったりしますよね。あれは、その文言を載せることで消費者に「合理的事実」を伝えているのです。今回であれば、「※お申し込みから9ヶ月後に施術費用00,000円が発生します」などと表記すべきでした。


ただ、ご本人も「なぜわたしばっかり…」とこぼされているように、このような景品表示法違反広告は、実は日常山ほど垂れ流されてます(J:comで流されてるコスメや健康食品のCMとかね…)。個人的には、よくH◯嫁(◯谷杏奈)の広告表現に違和感を覚えます。「白髪が生えなくなるシャンプー」とか謳ってるけど、それただのカラシャンやし!


今回このブログを書くにあたり調べてみたところ、「景品表示法」って違反するだけではあまり罰せられることがないようです💧 何か違反している場合、まず消費者庁から何らかの「措置命令」が下され、それに従わなかった事業者が「2年以下の懲役又は300万円以下の罰金」を課される、ということのようです(景品表示法第38条)。実際、2019年に大阪のネット通販業者(Growas)が効果を保証できない「シミが消えるクリーム」や「痩せるジュース」について「再発防止命令」を受けています。


ここで1つ言えることは「てんちむさんは消費者庁から指導や罰を受けたわけではない」ということです。そもそも論でいえば、今回景品表示違反に問われるべきは、事業主の「C3」です(てんちむさんが個人のインスタストーリーズに投稿してしまったので、少しややこしいことになってますが)。そして、もっとエグい景品表示法違反事例はいくらでもあります。てんちむさん自身、今回の騒動で「薬事法やコスメに関する資格を取りたい」と発言したことで「ズレてる」などとさらに非難されていますが、わたしはあながちその発想も間違いではないように思います。わたし自身、コスメ業界で働いていた時に業界主催の薬事法の研修を受け、景品表示法についてもその時学んでいます。今もその知識を仕事で生かしているからです。


今回の騒ぎをどう捉えるかは人それぞれ自由ですが、コスメや美容・医療の分野の広告表現には他にも様々な規制があり、注意が必要です。こんな初歩的な誤りは論外ですが、そういった分野でこれから起業される方や広告案件を受けるインフルエンサーの方には、それらの知識を持つ人にチェックしてもらうことをオススメします。今回のような内容であれば、わたしなら相談料などいただきません。初歩的すぎて考える時間も必要ないですから😅 とはいえ、一からご自分で勉強する時間と手間を考えれば、プロの手を借りる方がよっぽど効率的で確実ですよ💡